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Reportレポート

【BCリーグvs関西独立リーグ】茨城アストロプラネッツとの交流戦記

コロナによるオンライン化の波は、日常の仕事を大きく変えた。zoomを代表とするオンラインツールを使うことで、今まで必要だった場所の確保や移動に対する時間などが取り払われた。

職種によって相性の合う・合わないはかなり分かれるところだが、株式会社NOMALの代表兼堺シュライクスのオーナー・松本の仕事に関しては、かなり相性が合うと言える。

オフィスの席で向かいに座る松本は、今日もオンライン会議をしていた。ヘッドホンをしているため相手の声が聞こえないが、松本の口から発する言葉でなんとなく相手の察しはつく。おそらく、茨城アストロプラネッツ代表の山根さんだろう。

茨城アストロプラネッツとは?
2017年設立。2019年からプロ野球独立リーグ「ルートインBCリーグ」に参戦。「茨城県の茨城県民による茨城県民のための球団」をビジョンに掲げ、地域密着型の球団として県内の活性化に貢献することを目的として活動している。

戦う場所は違えども、同じ独立リーグという舞台で、しかも同い年。野球を通じて地方から盛り上げていこうという二人の姿は、同志ともライバルとも取れる。

ずいぶん前に山根さんがNOMALのオフィスまで遊びに来てくれたことがあったのだが、その際お土産でモナカを頂いた。そのモナカがもう、あんこがぎっしり詰まってめちゃくちゃ美味かったことを覚えている。

山根さんがくれたモナカを思い出して小腹を空かせていると、松本がオンライン会議を終えたようだ。ヘッドホンを外した彼は、開口一番こう言った。

「ちょっと茨城まで行こうか」

なるほど、茨城。まぁなんとなく流れは読めていた。さすがに3年目ですから。茨城と交流戦をして、その試合を記事にする。そういうパターンでしょ?ドヤ顔で返答する僕を尻目に、松本は話を続けた。

「記事はもちろんだけど、今回のメインは動画撮影ね。ハイライトをYouTubeで配信する予定だから。よろしく!」

よろしく!じゃないんだよ。野球のハイライト動画ってあなたね、素人が手を出しちゃあいけない領域ですぜ。しかも記事用の写真も撮りながら動画撮れってか。それはキャパオーバーですよ完全に。モナカだったらあんこはみ出してまっせ。

というわけで、あんはあんでも不安がいっぱいに詰まった状態で迎えた茨城との交流戦記、もとい僕の奮闘記、スタートです。

開幕戦の生配信に向けて

東京から電車とレンタカーを駆使して3時間、試合が行われる茨城県笠間市民球場へと向かった。球場へ向かう道中、どうしていきなりYouTubeなんてことになったのか話を聞いてみた。

「初年度は球団作るのでバタバタしてたけど、2年目はリーグ優勝できた。たださ、目標はそこじゃないやん。あくまでもNPBに選手を送り出したい。そのためにおれらができるのはYouTubeだと思うんだよ。今更だけどね」

たしかに昨年は優勝できたけど、NPBへ行けた選手は一人もいない。選手各々がSNSで自分を売り出していくのは大前提として、もっと選手の魅力を伝えるためには、やはり映像の力が必要だ。

とは言えテレビなんて簡単に特集してもらえないしアホみたいにお金がかかる。また、YouTube用の動画制作を業者に頼むのもお金がかかる。何をするにもお金がかかる。

結論、自分たちで動画を作ってYouTubeで発信していく、という方向で話が落ち着いたようです。


2021年から堺シュライクスはYouTubeに力を入れています。

本日対戦する茨城アストロプラネッツさんは、YouTubeの配信にかなり力を入れている球団。動画数は100本以上あり、内容もサムネイルも相当作り込まれている。

中には試合のハイライト動画も数多くあり、どうやって撮影しているのかを勉強するには絶好の機会というわけです。

茨城アストロプラネッツのYouTubeチャンネルを見てみる

さらに松本には目的があった。

「今日の試合は生配信があってさ。で、うちも開幕戦で生配信するから偵察に」

そうなんです。堺シュライクスは4月3日の開幕戦、生配信をします。

生配信自体は過去に何度かしていますが、今までと大きく違うのは、業者の手を借りずに自分たちの手で配信するということ。

なんでかって?業者さん高いのよ!めちゃくちゃ高い!具体的な数字は言えないけど、中古の軽自動車1台買えるくらい高い。

本来ならばそれなりのお金がかかることを、お金をかけずに自分たちの手でやる。しかも、本番までにシュライクスのオープン戦に参加できるのは、今日を含めてあと2回。

あとたったの2回で、生配信の仕組みやら動画撮影のアレコレを整えなければならないのだ。完全にナメてる。

それぞれのミッション

笠間市民球場に到着。周りにはテニスコートや子供たちが遊べる広場があり、朝から体を動かす地元の方々で賑わっていた。球場の入り口には、お手製のお出迎えが。

どこか懐かしさと暖かさを感じる手書きのPOPや選手のパネルがお出迎えしてくれました。

すごく良いなー、シュライクスでもパクろう。あと、球場の入り口にあったセルフカフェ。後で聞いた話によると、人手がいなくて苦肉の策で生まれたシステムらしい。どんな状況でもファンをもてなそうという姿勢に感動した。これもすぐパクろう。

首脳陣や選手たちに挨拶を済ませ、茨城アストロプラネッツのオーナー・山根さんにお会いした。「普段どうやって配信しているのか」を早速聞いてみると、

・スイッチャー(生放送で画面を切り替える機械)
・SBO(ストライクボールアウトの表示)
・解説

山根さんがこれらを一人で回しているそうです。超人かよ。4月3日の開幕戦では、松本がこの1人3役を担当する。バタバタする光景が今から目に浮かぶが、そうならないための勉強をしにきた。


ここで一旦、本日のミッションを確認しておきます。

松本:4月3日の開幕戦までに生配信のアレコレを覚える
僕:野球のハイライト動画を撮って(編集して)YouTubeで配信する

松本は松本で「山根さんができてるからイケるっしょ」という謎の自信をもっていたが、まぁ彼がそう言うなら大丈夫なのでしょう。

問題は僕だ。野球のハイライト動画をYouTubeで配信する。はっきり言って、全く自信がない。おそらく素人が手を出してはいけない領域のはずで、考えただけでもゲボ吐きそうになる。

とはいえゲボも弱音も吐いてられない。やるしかない。この日のためにプロ推奨の三脚とハンディカムを購入したし、報道ステーションやらSPORTSウォッチャーやらプロ野球のハイライト動画も満遍なくチェックしてきた。頭の中には撮りたい画が入ってる。よし、いける。イメージはバッチリだ。

試合前のノックで「球追い」の練習をしてみる。打球の行方を追って臨場感を出すためにも、球追いのスキルは必須なはず。

イメージ通り、目標をセンターに入れてスイッチ。ノックする藤江さんをズームで捉えてから、打球を追う。あれ、球どこ行った。ズームと引きの感覚がわからない。もう一度、目標をセンターに入れてスイッチ。藤江さんをズームで捉えて…藤江さんどこだ。今度はズームしすぎて見失う。あ、打球が外野に…センター、いやレフトか。だめだ全然追えない。そうこうしているうちにノックが終わる。やっぱり自分、ゲボ吐いてもいいですか?

BCリーグvs関西独立リーグ

今回の試合は、「昨年度BCリーグ最下位のチームvs昨年度関西独立リーグ優勝のチーム」という構図になっている。日本最大の独立リーグと我々との間に、どれほどの差があるのか。この交流戦だけでわかるものではないが、ひとつの物差しにはなるはずだ。

茨城は創設以来2年連続リーグ最下位となっているが、2021年シーズンからゼネラルマネージャーとして色川冬馬氏を迎え、戦力面での改革を行った。その改革のひとつが「育成選手制度」。チーム内で競わせることで、選手の意識・能力の双方を高めていくという狙いだろう。

育成選手にとっては、開幕目前のここいらで結果を出さないと、今シーズン試合に出る機会を失う状況というわけで。なるほど、どうりでピリピリとした空気が伝わってくる。

対する堺シュライクスのベンチ裏を覗きに行くと、なぜか杉森が歯磨きしていた。

「うーてぃんはんへふ(ルーティンなんです)」と答える杉森。ふざけてるのかと思ったけど、6回表にしっかりタイムリーを打っていた。

先発吉村は好投。エース吉田は…

午前11時、プレイボール!

堺シュライクスは1回裏、先発の吉村が三者連続のヒットを浴び、初回からノーアウト満塁のピンチを迎える。続く4番をゲッツーで打ち取るも、この間に3塁ランナーがホームへ還り1点を先制される。しかし後続をレフトフライで打ち取り、追加点は許さず。

その後のイニングでは毎回出塁があったものの、3回1失点で先発の役目を終える。新加入の18歳吉村、今後が期待できるピッチングだ。

ちなみに吉村の名前は樹。一見すると「いつき」と読んでしまいそうになるが、読み方は「たつき」です。いつきじゃなくて、たつきです。あれ、どこかで聞いたことのあるフレーズだなと思ったそこのあなた!そうです、堺シュライクスのファンクラブページでこのキャッチコピーが確認できます。

他にも「渡り鳥スラッガー」や「笑顔と筋肉のハイブリッド」など、様々なキャッチコピーが選手につけられていますので是非堺シュライクスのファンクラブページでご確認ください。なんかどこかで見たようなデザインだって?ちょっと何言ってるかわからないですが、僕はNetflixよりamazonプライム派です。

試合は4回裏、吉村樹から吉田亘輝に変わる。

亘輝と言えば、2年連続リーグ最多勝のタイトルを獲得しているシュライクスのエース。亘輝が投げるなら大丈夫。ちょっと慣れない球追いで正直まいっちんぐマチコ先生だし、シュライクスの反撃の場面を抑えるためにも一服するなら今しかない…とか考えていたら、全然そんな場合じゃなかった。

2アウトから3ラン、ポコポコ打たれて満塁からの2点タイムリー、続くバッターに3ラン。1回35球8失点という、結果としてこの試合を決定づける回となってしまった。

昨年までのシュライクス不動のエースがここまで打たれるなんて…たまたまなのか、BCリーグとの差が浮き彫りになったのか。前者だと信じたい。

堺シュライクスはその後、新戦力・樋口や藤田のホームランが出るも、その決定的な瞬間を見事に撮り逃がす。大橋、杉森、将悟のタイムリーもことごとく、だ。言い訳でしかないが、ホームランの瞬間は突然来るのだ。「当たり前や!」というツッコみが遠くから聞こえるので、そっと耳を塞いだ。

試合は6-12の大差で敗れる。


樋口のホームランに違和感を感じた方、どうか低評価を押すのはお控えください。

撮れ高はないが収穫あり

動画撮影ですっかり忘れていたが、生配信のアレコレを覚えるミッションを抱えた松本の方はというと、「なんか知らんがずっと解説してた」そうです。
1人3役なんて全然できず、スイッチャーのスの字も覚えることはできなかったらしい。おいおい大丈夫かよこの状況。

とはいえ、なにも収穫がなかったわけではない。

松本のミッション、生配信における収穫

山根さんが、スイッチャー・SBO・解説を1人で回すという離れ業をこなせるのには理由がある。
茨城は昨年、60試合中7勝49敗4分という成績で、とにかく勝てなかったらしい。そんな中、ファンの皆さんに喜んでもらうためには、とにかく動画配信に力を入れるしかなかったそうだ。

業者に頼ることもなく、自ら調べて機材を揃え、試合開始の5時間前には球場に来て配信準備を始め、1年間かけて生配信の形をつくってきたということだ。

複雑そうな機材やゴチャゴチャした配線も全て山根さんが揃えた

それでもSBOのカウントを間違えるとファンからはクレームが来るし、今日の配信も9回に入ったところで通信トラブルが発生し、「大事な瞬間映ってねぇじゃねえか!」とクレームが入っていた。勘弁したってや。

万全の準備をしてもトラブルは起こる。「山根さんができてるからイケるっしょ」という試合開始前まであった謎の自信は綺麗サッパリ吹き飛び、「まじで万全な準備をしないと無理だコレ」と、必要な機材などを細くメモを取っていた。

僕のミッション、ハイライト動画の撮影における収穫

自分なりにイメージして臨んだけど全くできなかったし、タイムリーもホームランもことごとく撮り逃がした。散々な結果だったけど、最大の収穫は「できないことがわかった」ということ。

例えば、ノーアウト満塁の場面では、「どこから何を撮るか」が重要なんだなと。このシーンで撮りたい画としては、

・バッターが打った瞬間
・打球の行方
・ホームに還るランナー
・ベンチでハイタッチする選手たち

などが挙げられる。ひとりで全てを収めることは不可能だから、「どれを優先して撮るのか」をあらかじめ決めておかなければならない。どのシチュエーションで何を優先するか、これを頭に叩き込んで撮影に挑む必要がある。※ちなみに僕は野球経験者じゃない。

確認できただけでも、茨城は配信用のカメラが4台はあった。なんなら配信用に元制作会社で働いていたスタッフを雇ったらしい。人手と経験は今から開幕までにはどうしようもないので、少数でできるようにしっかり作戦を練って開幕戦を迎える、これしかない。かなりの無理ゲーだけど、やるしかない。

茨城の皆さん、ありがとうございました!

帰りの車中で松本は「茨城本当にすごい。シュライクスはもっと良くなれる」と何度も言っていた。今日の試合は大差で負けてしまったが、それに見合った収穫を得ることができたようだ。

最後に、お忙しいなか堺シュライクスと試合をしてくださった茨城アストロプラネッツの皆様。本当にありがとうございました!

撮影のために1塁側にお邪魔させていただいたのですが、「応援旗振ってますけど映像のジャマになってませんか?ジャマだったら言ってくださいね!」とか「良かったらどうぞ!みんなに配ってるので」とプリッツくれたり。応援してる様子もそうですが、めちゃくちゃ暖かいファンの方々だなと感じました。

今後は、年に1回でも交流戦ができたらいいなと勝手に思ってます。次は堺でやりましょう!

あとこれは個人的な感想だが、試合終了後に流れる曲のチョイスが素晴らしかった。オーナーの山根さんが選曲しているらしく、見に来てくれたファンの方に最後の最後まで楽しんでもらおうというサービス精神が見えた気がする。夕日が出始めた頃に球場からこち亀のエンディング「葛飾ラプソディー」が流れたら、それはもう泣いてしまうでしょ。

来れぬなら 届けてみせよう 生配信

とにかく課題は山積みだが、泣いても笑っても開幕戦はもう間もなく!どうせやるなら笑って開幕戦を迎えたいですね!

ということで、4月3日はYouTubeにて生配信が行われます。

球場に来れる方は球場で、どうしても来れない方もスマホかパソコンがあれば見れますので、ぜひ堺シュライクスの雄姿をその目で見届けてください!

YouTubeチャンネルにご登録いただければ、当日スムーズに見れるかと思いますので、事前登録お願いします!

YouTubeチャンネルに登録する

万が一配信トラブルで見れなかった場合?うーん、その時は弊社平山のセクシーショットでもYouTubeにあげますんで勘弁してください。

それではみなさん、4月3日にお会いしましょう!

↓茨城戦をハイライトでチェック!↓

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