【嵐を呼ぶ開幕戦】無観客でも熱すぎる展開!オーナーの解説つき
6月13日、約2ヶ月遅れでさわかみ関西独立リーグが開幕しました。
もともと4月5日に開幕予定だったが、コロナ騒動で延期。
その直後、4月7日に発令された緊急事態宣言。その期間すらも延期。
延期に次ぐ延期を乗り越え、ようやく開幕戦を迎えることができました。
長かった…本当に長かった。
選手もファンも、さわかみ関西独立リーグに関わるすべての人が待ち望んだ開幕戦。
まだ終息はしていないから無観客試合になってしまうけれど、とにかく楽しみで仕方ありません。
そんな開幕戦が行われる兵庫県三木市、試合開始時刻の雨雲予想がこちら。
完全に包囲されています!
コロナコロナですっかり忘れていましたが、6月といえば梅雨の時期。いつ雨が降ってもおかしくないという状況です。
どうなる開幕戦!どうなる堺シュライクス!
目次
不安要素
6月13日AM8:00。
現地から「試合決行」の連絡を受け、大西監督や松本オーナーを乗せた車は、開幕戦が行われる兵庫県三木市に向かった。
車中のテレビから流れる不倫報道でひとしきり盛り上がった後、大西監督の口から本日のスタメンが発表された。
1番 大神 康輔(センター)
2番 平岡 楓(ライト)
3番 鶴巻 璃士(レフト)
4番 山田 偉琉(キャッチャー)
5番 樋口 勇次(ショート)
6番 大友 健史(DH)
7番 佐藤 将悟(ファースト)
8番 丹羽 竜次(セカンド)
9番 今井 寿希也(サード)
先発 佐野 太河
半数以上が今年からシュライクスでプレーする面子だ。
なかでも先発に選ばれた佐野君は、松本オーナーが直々に声をかけて入団してもらった期待の新星。
さぞ松本も嬉しかろうと顔を覗いてみると、なにやら険しい表情。
理由は、彼の投げる「ナックルボール」の特徴にある。
ナックルボールとは、ほぼ無回転で空気の抵抗を大きく受け、左右へ揺れるように不規則に変化しながら落下する。
不規則すぎて、なんなら投げた本人すらどう変化するのかわからないという代物だ。
空気抵抗を受けるほぼ無回転の球は、指で弾くような独特な握り方から生まれる。
はたして、「雨 時々 大雨(たまに曇り)」という今日の天気で投げれるのか?という不安がひとつ。
さらに、雨の影響で制球が定まらずにフォアボールの連続で試合の進みが遅くなり、そのうち雨雲に飲まれて試合中止…という最悪のケースも考えられる。
実際どうなんですか?と大西さんに聞いてみても「やってみないとわからん」とのこと。
期待と不安が入り交じる中、試合会場である三木防災公園野球場に到着した。
それはまるで福田吉兆のような
球場周りはとても自然が豊かで、「マムシにご注意!」という看板が至るところに置いてあった。
豊かすぎるよ。
新年に行われた決起会ぶりに選手たちと会ったので、正直言うと新入団の選手は顔と名前が半分くらい一致してない。
去年の開幕戦もそんな感じだったなぁとしみじみ思い出しながら、改めて新チームでの公式戦が始まるぞという緊張感で身が引き締まった。
開幕戦に向けての意気込みを選手たちに聞きたかったが、試合までの時間も迫っていたので、暇そうにしていた河村と先週の安田記念の話くらいしかできなかった。
みんな応援してるよ!がんばって!
審判団と監督同士でメンバー表の交換が行われ、こんなご時世なので“エア握手”を交わして試合開始。
いつ土砂降りになってもおかしくない状況なので、試合時間は10分早まり11:50プレイボール!
一回表、シュライクスの攻撃は1番大神から。
大神は大学卒業後、一年間公園で走り込みしたり、近所の空き地で壁打ちをするなどして入団テストに合格。
全然関係ないけど、勝手にスラムダンクで謹慎中に何もない空に向かってシュートを打ってた陵南のフクちゃんみたいに思えて応援している。情熱が止められないんだよな…
2番のかえちゃん(平岡)、3番のリオ(鶴巻)は去年から知っているが、4番の山田君は初めて見る。
ふと、球場へ向かう車中で言っていた大西さんの言葉を思い出した。
2月のキャンプインから4ヶ月で4番になった選手やで。
身長が高くオーラもあり、打席でゆらゆらとバットを構えるその姿は、どことなく大西さんに似ている。これは人気出るな、とそんな気がした。
初回は三者凡退で終わる。
それはまるで魚住純のような
一回裏、先発はナックラー佐野。
先頭打者にヒットを許し、ランナーは一塁。
なんか急に解説始まった。
魔球と呼ばれるナックルにも弱点があったのか。野球初心者の僕にとって、この解説はありがたい。
そしてたぶんこのオーナー、無観客+アウェイで仕事なくて暇だから、普通に野球観戦するつもりだ。
一塁ランナーが大きくリードを取る。
ランナー走った!すかさずキャッチャー山田が2塁へ!
アウト!山田君ナイスプレー!
でも本当に牽制できないとしたら毎回走られるってことでしょ。ナックルの代償でかいな…
続くバッターにもヒットを打たれ、ノーアウト1塁。ランナーは大きくリードを取っている。
と、ここで1塁牽制。
牽制した!
カウント2ボール1ストライク。またもやランナーは大きくリードを取っている。
次の瞬間、1塁牽制!アウト!
佐野君しっかり対策練って練習してきたんだ!
さすが、フルタイムナックルボーラーを目指すその心意気は伊達じゃない。
なにその陵南戦で4ファウルの魚住がゴール下の赤木に対してオフェンスチャージすれすれの当たりをした時に観客席の牧が「あいつは今線を引いたんだ…」みたいなプレー!渋い!アツい!
佐野君の魚住ばりの好プレーが際立ち、一回無失点で攻守交代。
鍛錬、脱皮、羽化
試合が動き出したのは3回表。
6番大友がヒットを放ち出塁!今季初ヒットは大友健史!
ノーアウト1塁の場面で、バッターは佐藤将悟。
3球目。
ランナー走った!将悟も打った!
打球はサードの頭上を超えた!ヒットエンドラン!
スタメンの多くが新加入の選手というなか、チャンスを繋いだ佐藤将悟。
将悟のことは去年から見て知ったつもりでいたが、なんだか目の色が変わったように見える。事実、この日は4打数2安打と絶好調だった。
ノーアウト2塁3塁。続く寿希也がファーストゴロ、その間に3塁大友がかえって1点先制。
打順は1番大神へ戻り、三遊間ヒットで追加点。
この回シュライクスに2点が入る。
「掲示板の表示がS・B・Oだ!」と球団スタッフ伊藤ちゃんがテンション上がってた。
相手のエラーではあったが初めてランナーが出て、そこから繋いで点をもぎ取った。
勝機を零すな、掴み取れ!シンフォギア!いいぞ!
ナックルの揺れと気持ちの揺れは反比例するんやで
2-0でリードのまま5回裏。
この「5回」というのがミソで、5回終了時に得点が上回っていれば勝ち投手の権利が与えられるらしい。え、常識?
そんな豆知識を仕入れた矢先、先頭打者に危険球を投げてしまう。
時折降る雨、ナックルという指に負担のかかる投げ方、そしてなにより開幕投手としてのプレッシャー。
勝利投手の権利がかかる5回裏、1アウト1,2塁のピンチが訪れる。
ナックルの揺れは「気持ちの揺れと反比例する」って言われとるんや。
平常心で投げることができれば揺らぎは大きく、逆に動揺はただの棒球を招く。
ここはナックラーとしての真価が問われる場面やで…知らんけど。
青森出身のオーナーがエセ関西弁になるほど緊迫した場面。
佐野の球は、大きく揺れた。
見事バッターを打ち取り、この日は5回どころか7回まで投げて1失点という、開幕戦としては出来すぎた成績を残した。
試合終了後、大西さんが車中で話してくれた。
それほど佐野が予想以上に投げてくれたということだ。ナイスピッチング!あとは後続に任せよう。
この日の佐野君が取り上げられています!
取り上げていただきました! https://t.co/NeWMWoEaxg
— 佐野 太河/Taiga Sano (@tsz_1) June 13, 2020
勝ち投手の権利
2-1。一点差のリードでむかえた8回裏、佐野に変わってリキ(斉藤 力)がマウンドに立つ。
ここでふと、「このまま勝てば佐野君が勝ち投手になれるのか?」と疑問に思い、解説の松本に聞いてみた。
カキーーン!!
え、なに、条件?他の条件がなに!?やめて!
フェンスギリギリ。あっっぶな!
そう、それで他にも条件があって、万が一ここでリキが同点にされるか逆転されたら…
カキーーーーン!!!
だからなんなんだよ!同点にされるとだめなの?いやダメなのはわかってるけど、入るな!頼むっ!!
フェンスギリッギリ。頼むぜリキ!
万が一ここでリキが同点にされるか逆転されたら、佐野の勝ち投手としての権利はなくなるっていうね。
ようやく言えたわ。
カキーーーーーーーン!!!
深ーいライトフライ。スリーアウトチェンジ!
結果だけ見れば三者凡退ですが、相当肝を冷やしました。
恐る恐る藤江コーチを見てみると、怒りを通り越してガックリとうなだれている。
リキ、ここで降板。
劇場支配人、河村
9回裏、1点差のリードを保ちながらマウンドに向かったのは河村。
河村は去年からいる選手で、そこそこ話もする。試合前に唯一話せた選手だ。
ただその内容が、
「アーモンドアイとグランアレグリアのワイド取りましたよ!」
というしょうもないもの。
お調子者という印象が強く、不安しかない。
その不安を煽るかのように、場内にアナウンスが流れた。
「9回裏、兵庫ブルーサンダーズの攻撃ですが、この回で同点となった場合、延長は最大11回まで行われます。繰り返します、9回裏…」
ホームだからってそんな心理作戦ありですか!?姑息な手を…!
さらには、ギリギリもっていた雨も強くなってきた。嫌な予感しかしない。
先頭打者はフォアボールで出塁。続くバッターはタイムリーを打っているキャプテンの仲瀬。
河村劇場が始まった。
藤江コーチがタイムを取り、選手がマウンドに集まる。試合終盤のこれもなんだか見慣れた光景だ。
しかし、流れは変わらない。
初球バントを成功させ、あろうことかノーアウト1,2塁。
この日最高潮の盛り上がりを見せるブルサンベンチ。
水を打ったように静まり返るシュライクスベンチ。
向こうはバントの構え。なんとしても2塁,3塁にしようというところか。
ボール、ストライク、ボール、ストライク。
バントの構えから時折ヒッティングに切り替え翻弄してくる相手打者と、それを読んで外してくるバッテリーとの真剣勝負。
一打出ればサヨナラ。
河村劇場は続く。
2ボール2ストライクで大事にいきたいところ。ここで事件が起きた。
審判が手を挙げ、カウントは3ボール2ストライク。
一瞬何が起きたのかわからなかったが、すかさず解説の松本。
20秒ルールとは、キャッチャーの返球を受けてから20秒以内に投げないと、ボールになってしまうものだ。
兎にも角にも、ノーアウトでフルカウント。バッターはヒッティングに切り替えている。
頼む…河村…!死守ー!シシューー!
変化球!ットラィク!バラァウ!!
ふぃ〜〜〜〜〜〜〜〜息が詰まった。
でもまだ危機は脱していない。1アウト1,2塁。
またもやフルカウントまでもつれ込んだが、それは一瞬の出来事だった。
カンッ!
ゲッツーコース!セカンド取った、ファーストに送る!ダブルプレー!試合終了!
河村劇場、これにて閉幕!
ちなみにこの日の様子はYoutubeで見れますので、ぜひご覧ください!
チームのために、明日のために
開催すら危ぶまれる天気の中、去年の開幕戦に続き、今年も勝利を飾ることができた。
シュライクスも半分以上選手が入れ替えとなったのだが、ブルサンは二人以外総入れ替えだったそうだ。
なにより投手陣の層の厚さに驚いた。4人交代してきたが、打ち崩すのが難しそうな選手ばかりだった。
ドラフト候補を探せ!兵庫ブルーサンダーズの2020年 開幕戦(vs堺シュライクス)≪投手編≫
今日の試合、印象に残った2つのシーンがある。
6回表、先頭打者の大神がヒットで出塁。この日2打席とも三振のかえちゃんに打順が回った場面。ベンチからのサインは、送りバント。
次に、9回表で先頭打者の樋口が出塁し、この日3打席凡退の丹羽ちゃんに回ってきた場面。ここではバントのサインがなかった。
これについて、大西さんが語ってくれた。
去年は『プロに行く』っていう個人の夢を尊重して、あんまりチームとしてサインを出してなかった。
でも今年は、チームとしての勝利も狙っていきたいと思ってるから、去年より攻撃のサインを増やした。
だから、かえちゃんの場面ではチームのために、丹羽ちゃんの場面では明日のために打たせにいった。
攻撃のサインを増やし、攻めの姿勢を見せる堺シュライクス。
今日の試合は何点でした?と聞くと、詰まりながらも「97点」と答えてくれた。
明日のホーム開幕戦を勝って開幕2連勝なんてことになれば、球団初の優勝が見えてくるかもしれない。
しかし、そんな期待とは裏腹に雨は降り続き、今日よりも大きな雨雲が西から迫ってきていた…
どうなる明日のホーム開幕戦!
おまけ
試合終了後、9回裏の緊迫した場面で20秒ルールをとった審判に対してしっかりとケジメをつけさせにいく藤江コーチ。