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Reportレポート

優勝の瞬間を目撃せよ

今度こそ優勝なるか!マジック点灯緊急企画「優勝するまで帰れまテン」

~前回までのあらすじ~

ある日東京のオフィスで仕事をしていると、「堺シュライクスがマジック1になった!今から大阪行くぞ!」と松本に拉致られ、翌日の試合に備えて大阪に前入りして笑ぎゅうへ。

 

しかし、到着した我々には「雨天中止」という現実が待ち受けていた。

さらに追い打ちをかけるように、マジック1というのは松本の勘違いで「翌日試合があろうがなかろうが優勝なんてなかった」という衝撃の事実が発覚する。

 

そう、我々はただ大阪に行って焼き肉を食って一泊して東京に帰る、というブルジョワのような生活を送ってしまったのだ。

 

※詳しくはこちらの「優勝目前!マジック点灯で大阪へ駆けつけたオーナーだったが…」をご確認ください。

 

優勝の瞬間を見届けるために

ある日、オーナーの松本からミッションが言い渡された。

「優勝の瞬間を目撃して記事にせよ」

堺シュライクスはマジック1となり、今度こそいつ優勝してもおかしくない状況となった。

オーナーとしては当然見届けたい、しかし、前述した勘違いによって仕事の予定が狂い、優勝をかけた試合当日はどうしてもお客さんとの約束をキャンセルできないという。

 

ただ、さすがに前回の勘違い記事だけ書いて、優勝の記事を書かないのはマズいでしょう、ということで僕だけ大阪へ行くことになりました。

 

そこで松本から一言。

「あ、今月経費オーバーしてるから、新幹線じゃなくて夜行バスで行ってね」

 

いやそれ完全に前回の勘違いで発生したムダな経費のせいですやん!!

それで今回おれ一人の移動のときだけ夜行バスってか!へぇ~!

ま、しょうがないよね!こんなご時世だから節制しないとね!!

 

というわけで夜行バスで大阪へ向かいます。

夜行バス、懐かしいなぁ。
地元青森から東京の大学へ進学を決め、上京するときに選んだ移動手段は夜行バスだった。
バスに揺られて約9時間、到着する少し前にバスから見えた超高層ビル群と、それを照らす朝日。
向かう先は違えど、夜行バスに乗ると今でもあの光景を思い出す。

 

そうやって感傷に浸っていたのも束の間、一時間もしないうちにケツが痛くなってきた。
さらには途中から乗車してきた前の席のおばちゃんが、座るやいなや背もたれ全部下げてきやがった。急に下げるもんだから両膝はさまったっちゅーねん。
背もたれ下げるのは完全消灯後なんだよ?と少しだけ殺意が湧いたが、イビキがうるさいとか隣人のイヤホンから音がダダ漏れとか、そういう劣悪な環境も含めて夜行バスだったことを思い出した。

 

ついでに夜行バス史上最も厄介だった出来事も思い出した。
後部座席の赤ちゃんが夜泣きをしていたときの事だ。夜泣き自体は全然いいんですよ。赤ちゃんだもの、しょうがない。ただね、夜泣きしながら延々と僕の背もたれをガンガン蹴ってくるんですよ。
それはお父さんお母さん止めれるでしょうと、さすがに注意しようと振り返ったところ、外国人だったんですね。しかもロシア系。ハラショー。

 

優勝する準備はとっくに出来ている

そんなこんなであまり眠れずに大阪に到着し、銭湯や喫茶店で時間をつぶし、本日優勝が決まるであろう花園セントラルスタジアムにやってきました。

 

花園はブルズのホームなので、入口からアウェー感が漂っています。「絶対にここでは優勝させないぞ」という強い気持ちが伝わってきました。

 

でもこちとらマジック1。もうね、今日勝ったら優勝なんですわ。すみませんねブルズさん、さくっと勝って優勝させてもらいます。その瞬間用に大量の炭酸水も用意してますし。

 

インターンの子たちも優勝の瞬間見に来てくれてるんですわ。「優勝のこと考えたら緊張してきた!」「ちょっとシミュレーションしとく?」とか言いながらキャッキャウフフとはしゃいでいるんですわ。

 

実際に戦う選手たちはというと、特に浮かれることもなく至って普段通りでした。

試合前に大西さんからも「今日勝ったら優勝やけど、そこはあんまり考えずに普段通りの野球していこうな」と一言。

 

まぁ今年のシュライクスは強いですから。現時点で16勝4敗1分け、勝率76%ですよ。
普段通りにやったらまず勝つでしょう。

というより、今日ばかりは勝ってもらわないと困る事情がありまして。

 

優勝するまで帰れまテン!

ここで改めて松本から課せられたミッションを再確認してみましょう。

「優勝の瞬間を目撃して記事にせよ」

今日勝てば何の問題もなくミッションコンプリートとなるわけですが、万が一、万が一今日負けた場合に備えて、今後の日程をおさらいしておきます。

 

10/6(火)本日ブルズと試合

10/8(木)和歌山行って和歌山と試合

10/11(日)くら寿司スタジアムでブルズと試合

 

万が一ですよ?今日負けた場合、優勝の瞬間を目撃しなければならないわけですから、2日後の和歌山との試合まで大阪に滞在しなければいけないことになります。

 

少し前にありましたね、「全部当てるまで帰れまテン!」っていうテレビ番組が。

今回はまさに「優勝するまで帰れまテン!」なわけですよ。

 

僕にも仕事があります。今回はたまたま緊急の仕事がなかったから大阪に来れたけど、日程が延びるにつれて仕事が溜まっていきます。

そんなの今の時代パソコンさえあれば大阪でも仕事できるじゃないかって?そうですね、パソコンがあれば仕事はできます。

 

ただ、今回パソコンは持ってきていません。なんなら着替えも持ってきてないし、帰りの夜行バスのチケットも既に取ってあります。

これは僕なりのゲン担ぎです。

 

あまり負けた時のことを考えたくなはいけど、大阪滞在することになってホテル代かけてたら何のために夜行バスで来たんだって話になりますからね。もしもその時が来たら選手の寮にお邪魔します。

 

さぁ、ということで絶対に今日勝って僕を東京に帰してください。よろしくおねがいしますっ!!!

 

順調な滑り出し…と思いきや

一回表、堺シュライクスの攻撃からスタートです。

先頭打者の大神がヒットでノーアウト1塁!2番かえちゃんが送りバントを決めて1アウト2塁。続くリオの犠打で1点先制!よしっ!

 

なんだかすごくあっけなく点を取った。こんなにあっけないもんだっけ。いや、各々がやるべき役割を果たした結果がこの1点なのだ。

 

つまり、選手のみんなは普段通りのプレーができているということだ。いいぞいいぞシュライクス!

 

と、この時までは思っていた。

1回裏。3点取られて1-3。少し雲行きが怪しいけど、まぁまだ初回。これからこれから!

3回裏。捕手安積から3塁ランナーへの牽制球が逸れ、その間に1点取られて1-4。今のはよくないなぁ。

危機的状況は続く。

先発・糟谷君の調子が上がらず、1アウト満塁でフルカウント。

「頼む!なんとか乗り越えてくれ…」

祈りの声は届かず、ファーボールで押し出し。1-5。なおもノーアウト満塁。

「がんばれ、がんばれ…」

そうは問屋が卸さない、押し出し。1-6。

「………」

堪らず絶句した3度目の押し出し。1-7。

ここで先発の糟谷君がマウンドを降りる。

僕は野球をしてきた人間じゃないのでわかってあげられない。糟谷君が今、どんな心境なのか。

今日勝ったら優勝という試合で先発を任されて、その期待に応えられずに大量失点でマウンドを降りる。

想像するだけで吐きそう。

1アウト満塁で代わりに入った片山君。

堺シュライクス第2期からの選手でほとんど話したことはないが、「細長くて気が弱そう」という印象しかない。

 

今シーズンが始まる前に行われた決起会で、人見知りだから人前で話すだけで緊張してしまうと言った彼の声はとてもか細く、なんなら少し涙目になっていた。

 

その印象のまま今日を迎えているので、こんな3連続押し出し直後の1アウト満塁の場面なんて、出てきただけでゲボ吐くんじゃないかと心配したが、そんな心配をよそに、おそらく最少失点で3回裏を終わらせた。

さらにその後は、8回裏で片岡に交代するまで無失点で投げ切った。

たしかに見た目は細長いし気弱そうという印象は拭えないが、この状況を乗り切れるだけの実力と根性を垣間見た。片山君はデキる男!

長い長い悪夢のような3回裏は終わったが、悪い流れは止まらない。

1-9でむかえた4回表、ヒットで出塁するも倒れこむ大橋。様子がおかしい。肩を担がれ代走に代わる。肉離れだ。

「聞いたことない音が聞こえた」と語る大橋。

8点差を埋めるには4番の大橋の力が欲しかった…!本当に、いろんな意味で痛い。

 

怒涛の追い上げパチ

序盤の大量失点や主砲の脱落と、次々と困難が襲いかかってきたが、絶望するにはまだ早い。今年のシュライクスはただでは終わりません。

 

5回表。将悟、大神の活躍で1点追加!

6回表。ノーアウト満塁の場面で寿希也がライトオーバーのタイムリーツーベース!安積もタイムリーを放ってこの回3点追加!

6回裏。ライトのかえちゃんのスーパーキャッチ!サードの早河もスーパーナイスな守備!完全に流れを引き寄せ始めている。

7回表。かえちゃんのツーベースヒット!丹羽ちゃんの犠牲フライで1点追加!いいぞいいぞシュライクス!

 

5,6,7回と毎回得点を重ねて6-9。3点差まで追い上げてきました。

絶望的な点差だったけど、勝てるかもしれないところまで来た。

一筋の光が見え始めたことで、あのキャラクターがそわそわし始めました。

 

「逆転を信じて準備を始めるパチ…」

 

ホームゲームなら7回ラッキーセブンの攻撃の前に、みんなの前に登場して堺っ子体操を踊るライパチくん。

ビジターの試合では基本的に出番がありません。

 

だけども今日は「勝ったら優勝」という特殊な状況。

優勝の瞬間にみんな集まってワーワーするやつをライパチくんもやりたいみたいです。

喜びを分かち合いたい気持ちはライパチくんも一緒。

NOMALの平山2

「優勝が決まった瞬間駆け寄りたいパチ!あわよくば胴上げされたいパチ!」

いや、それは放送事故になるからやめたほうが…

NOMALの平山2

「僕がどうなったっていい、世界がどうなったっていい。だけどシュライクスだけは、絶対に助ける!」

優勝目前にして熱くなりすぎている。これは危険だ。ライパチくんがライパチくんでいられなくなる。

今にも暴走しそうなほど興奮冷めやらぬライパチくんでしたが、急におかしなことを呟き始めました。

 

NOMALの平山2

「…両軍がマウンドに集まってきたパチ」

 

両軍がマウンドに集まってきた?そんな状況、みのもんたの珍プレー好プレーでよく見たような…まさか!と思った次の瞬間、場内アナウンスが響いた。

 

「片岡君は危険球により退場処分となります」

 

あとから聞いた話によると、8回裏に片山君に代わってマウンドに上がった片岡だったが、その投げた球がバッターの頭に当たってしまったそうだ。

 

片岡と言えばMax148㎞の豪速球を放る投手。そんな球を当てられたら当然あっちも黙っちゃいない。あわや大乱闘寸前という事態にまで陥っていた。

危険球退場となった片岡に代わってマウンドに向かったのは関口。

今季初登板がこんな一触即発の状況で大丈夫かと心配したが、なんとか0点に抑える。

 

試合終了

9回表、点差は3点。まだ希望は残されている…!

3点以上取って裏の攻撃までいったらすぐに下に降りような!とライパチくんと本部2階で待機していたが、ゲッツーであっけなく試合終了。

 

あれ、終わっちゃった。

 

試合に熱中して忘れかけてたけど、この時点で松本に課せられたミッションを遂行できなかったため、僕の大阪滞在が確定しました。

 

今日は負けてよかった

ホームで優勝させまいというブルズの気迫が勝ったのか、あと一歩で勝ちきれないシュライクスの弱さが露呈したのか。もしくはその両方か。

試合終了後に藤江コーチが言っていた。

「練習から見直す必要があるな。やったらアカンこと全部出てたで。おれからは以上や」

今日の試合を振り返ると、たしかに酷かった。

送球ミスも多かったし、中途半端なタッチアップでアウトになったり。

 

今日は負けてよかったのかもしれない。

改めて今年のシュライクスの戦績を見ると、5敗しかしていない。これは負けなさすぎだ。

成功体験としての優勝という意味で得るものは大きいが、はっきり言って、優勝したから何が起こるわけでもない。

 

優勝したらNPBに選ばれる権利が得られる?そんなことはない。

あくまでも個人が成長しなければNPBには選ばれないし、その成長のためにまだまだやれることがあって、そのために練習をする。

 

今日の負けがきっかけで練習から見つめ直して、それで成長できたとしたら、これはすごく価値あるものになるはずだ。

 

選手寮にお泊りしました。

さて、優勝の瞬間を見届けるまで東京に帰れないので、ホテル代節約のために選手寮に宿泊が決定しました。

まずは寝床づくりから始めましょう。

普段は夏凪さんや伊藤ちゃんの仕事場である事務所を少し片づけると…

 

なんということでしょう!あっという間に人ひとりが足を延ばして寝れるスペースが確保されました。

昨日は夜行バスでしたから、脚を伸ばせるだけでも幸せです。人は日に畳一畳、米三合あれば十分と前田慶次も言ってたし。

 

残念ながら優勝の瞬間を見ることは叶わなかったので、最後に普段見ることができない寮生活をお送りして締めたいと思います。

 

佐野君(右)に勉強を教えてる風の山田君(左)ですが、本当の立場は逆。

 

台所にある選手の個人ボックス。

 

6回表にタイムリーツーベースを放って大活躍の寿希也(トランクス派)

 

わざわざお酒を買ってきてくれたリオ(左)と、お酒が強くないのに付き合ってくれた山田君(右)

 

歯磨きをする河村(右)と、セットしてない髪は見られたくない寿希也(左)

河村とはこのあと深夜2時まで競馬の話で盛り上がった。

 

深夜2時の独り言

久しぶりに夜行バスに乗って、昔のことを思い出した。

僕は大学を中退している。大した理由もなく中途半端に辞めて、地元に帰って就職をした。しばらく地元で働きながら暮らしていたが、まぁなんというかつまらない生活を送っていて、「このままでいいのか?」と思い、一念発起して30歳になる日に東京へ再びやってきた。

 

野球はやってないけど、中途半端に辞めた後のことはわかるつもりなので、一言だけ言わせてほしい。

 

辞めるにしても、僕のようにただ逃げるような辞め方だけはしないでほしい。

「気持ちが切れたから」とか、そういう辞め方はしばらく根っこに残るんだよ。人間も植物も、根腐れしたら終わり。

 

おそらく堺シュライクスは優勝するだろう。

そしてシーズンを終えると、退団する選手も少なからず出てくるはずだ。

その時に、後ろ向きな理由でだけは辞めないでほしい。

 

練習して成長する余地があるなら続けてほしいし、誰かに期待されているなら、その期待を信じて続けてほしい。応援しているその人の期待を裏切ることだけはしないでくれ。

 

堺シュライクスは夢をつかむ場所であり、諦める場所でもある。

 

改めて、球団設立当初から掲げてきたこのビジョンを自分なりにかみ砕いて、どうか前向きな決断をする選手が一人でも増えてほしいなと思いました。

 

おやすみなさい。

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