【監督×作者×球団オーナーによるスペシャル対談】
2019年8月9日、野球の日。
堺シュライクスは、高校野球漫画『バトルスタディーズ』(講談社「モーニング」連載中)とのコラボにより、DL学園のユニフォームを着用して試合を開催することになりました。
これに伴い、現在クラウドファンディングを実施していますので、応援よろしくお願い致します!
バトルスタディーズと夢のコラボ!DL学園のユニフォームを着て試合を開催をしたい。
今回は、そのきっかけとなったスペシャル対談の様子を公開します。
この対談、絶賛発売中の『バトルスタディーズ』18巻にも収録されているのですが、ここではディレクターズ・カット版としてお届けしたいと思います。
1998年の夏、甲子園を沸かせた立役者。
一方で、野球に冷めていた中学生と、引きこもりの小学生。
伝説の「PL対横浜延長17回」が、少年たちの運命のルーレットを回し始めた……!
それでは、ちと長めの対談とはなりますが、じっくりとお楽しみください。
まだ「バトスタ」を読んでないよ!という方には、こちらにネタバレなしの記事がありますのであわせてどうぞ。
目次
主人公“笑太郎”にこめられた想い
大西:今日はよろしくお願いします。
なきぼくろ:よろしくお願いします。緊張しますわぁ…
大西:なんでそんな緊張してんの(笑)
なきぼくろ:しますよそりゃ…緊張しすぎて口のなかしゅわしゅわですもん。ちょっとすんません、水飲みます。
松本:なきぼくろさんにとっては大先輩ですもんね。主人公の「笑太郎くん」と同じで僕も「祥太郎」なんですよ。
なきぼくろ:そうなんですか!息子の名前が「しょうたろう」で、そこから付けたんですよ。
なきぼくろ:「バトルスタディーズ」が初の連載になるんで、「息子の名前つけたら後には引けへんやろ!」みたいな気持ちで主人公の名前決めて。
大西:そうやったんやな。でもおれも漫画の中で「大東」として出られてめっちゃ嬉しかったで。(13巻参照)
なきぼくろ:ありがとうございます(笑)
一番右が大東さん(大西さん)
大西:あれも元ネタあるもんな。なきぼくろ君が1年の時に出場停止になったんやな。ほんでおれらが大学生やったからPLに練習手伝い行ったり、形式上の引退試合を大学選抜とやったんよ。
松本:本当にあったんですね!
大西:…で、ボロカス負けて(笑)
なきぼくろ:僕はこの日、めっちゃ怒られました(笑)
大西・松本:えっ?
なきぼくろ:だって、あの「PL対横浜」の先輩方が目の前で試合してるんですよ! もう夢中でしたね。1年やからいろいろ雑用とかあったけど全部ほったらかしで(笑)
松本:その光景見たかったな〜!
なきぼくろ:もうね、大西さんがセンターからバックホームする姿とか、これは見とかなあかん!って。もう笑いながら、笑ったらダメなんすけど(1巻参照)。「うわっ素でエグい、素でエグい!」とか言うて気付いたら上級生が隣に(笑)
なきぼくろ:ぼく、もともと捕手やったんですよ。でも、近大(近畿大学)の青いユニフォーム姿の大西さんが外野からバックホームする姿がすごくカッコよくて。それ見て、外野にコンバートしました。
大西:まじか!(笑)
なきぼくろ:ほんとにほんとに。お世辞に聞こえてしまうかもしんないすけど、それぐらい見ていましたし、憧れていました。
少年の運命を変えた“延長17回”
松本:噂には聞いていたけど、本当にPLのリアルが描かれているんですね。
大西:おれも初めて読んだときは「ギリギリ攻めてんなぁ」って思ったわ。あれホンマの話?ってよう聞かれるから「あれの1年生に笑顔がないのがホンマのPL」って答えてるわ(笑)
大西:洗濯も、先輩によってたたみ方が違うもんな。
なきぼくろ:はい、靴下からはく先輩は靴下を一番上に置いたりとか。
松本:凄いなぁ。なきぼくろさん、だいぶ緊張も解けてきたんじゃないですか?
なきぼくろ:まだまだ緊張してます(笑)もう中1ん時の感動が蘇って大変ですよ。実は当時、野球にまったく興味なかったんですよ。それであの日、たまたまPL対横浜の試合を見てスイッチが入ったんです。
大西:この話もリアルなんやな(笑)
なきぼくろ:元ネタにはなってますね。次の日からシニアリーグの九州遠征だったんですよ。それで床屋行って五厘にせなアカンって時に中継はじまって。何気なく見てたら「PLのユニフォームめっちゃカッコいい!」って。この試合は見たい!でも床屋に行かなアカン!クソっ!ってなって渋々出かけました。
大西:五厘にせなあかんからな(笑)
なきぼくろ:そうですね(笑)でも帰ってきたら延長戦やってて!そこからは夢中で見入って、もう完全にスイッチ入ってました。試合後すぐに「オカン、PL行くわ」って。
大西:じゃあおれが延長戦でヒット打ってなかったらPLにも行ってなかったし、下手したらバトスタもなかったかもってことか(笑)
なきぼくろ:そうなんです。大西さんがロジンで真っ白になった素手でバット持つのとか、カッコ良すぎて。それで主人公も素手で描いてるんですよ。
大西:それはホンマに嬉しいなぁ。
なきぼくろ:もう、なんて言うんですかね…大西さん素手やし、あのかっこいいユニフォームは泥まみれやし…言い方アレやけど「戦争」みたいやなって。痺れました。
大西:でもすごいよね、中学1年でPL行くって決めたのは。
なきぼくろ:もうそこしか興味がなくなって。PLが無理やったら働くって決めてましたから、だいぶイタイ子やったと思います(笑)
松本:リアルに笑太郎君ですね。
なきぼくろ:ビデオが擦り切れるほどって言い回しありますけど、あの試合のビデオは3本擦り切れましたからね。
大西:見過ぎやろ!(笑)
なきぼくろ:延長11回の大西さん、2アウトから同点のヒット打ったのに笑わなかったんですよ。それ見て「打ったあと笑わん方がカッコえぇねや!」って。すぐ真似して、打っても軽くすますみたいな。
大西:恥ずかしいからやめて(笑)
なきぼくろ:「真似したらPL入れる」って思ってました、本気で。
話は通した。PLに行け
松本:大西さんはPLが第一志望だったんですか?
大西:彼には申し訳ないけど、中学のときは野球もそんなに好きじゃなくて。土日に「堺ビッグボーイズ」で練習するくらい。高校にも行く気なかったしな。それを見かねたボーイズの監督から「好きな高校はどこだ」って聞かれたけど、知ってる高校は江の川(現・石見智翠館)とPLだけで。そしたらその日の夕方に「話は通しといたからPL行け」って言われて。
なきぼくろ・松本:えぇ〜!
大西:「あ、おれPL行かなアカンねんな」みたいな。練習見に行った時も福留孝介さん(阪神タイガース)おったんやけど知らんくて。一緒に行ったヤツらは大騒ぎしとったけどな。笑
なきぼくろ:もう天才のパターンじゃないっすか!
大西:ボーイズの監督が「こいつはプロまで行く選手だから、絶対高校までは行かせる」って思ってくれてたみたいで。今思えばホンマにありがたい話や。
なきぼくろ:僕なんて、違うやつ見に来てるスカウトの方々にめちゃくちゃアピールして、バーターで入学させてもらったのに…
大西:それもすごい熱意やな(笑)
松坂のスライダーは”素でエグい“
なきぼくろ:PL時代に出会った一番の選手はやっぱり松坂さんですか?
大西:PL時代っていうより「野球人生で一番」やね。春には既に雑誌で取り上げられてたけど「まぁ大したことないやろ」思ってて。で、試合前のキャッチボールを見たときに「あ、えげつないな」って(笑)
松本:キャッチボールで分かるんですね。
大西:一応ぼくらもトップレベルの先輩たちを見ていたはずなんやけどね。おれの1打席目ではまっすぐしか投げなかったから、それ見て「あ、なんとかイケるかも」って思ったんやけど、2打席目でスライダー見たとき「あーこれ無理だ」って(笑)
なきぼくろ:すごい話だなぁ。最後の試合もけっこう覚えてますか?
大西:それが全然覚えてへんのよ。あの夏のことは見てる人のほうが詳しいんちゃうかな。12回から15回くらいまで得点入ってへんやん。あそこらへん、ほとんど記憶ないからね。
なきぼくろ:すごい…そうなんですね。
あの試合で人生が変わった“もうひとりの少年”
松本:当時小学校5年生だったんですけど、あの試合は家で母親と泣きながら見てました。実はぼく、引きこもりだったんですよ。1000日くらい部屋にずっと居て。
大西:そうやったんや、知らんかった。
松本:野球は好きで小3からやってて。でも、学校休んでゲームしたり精神科医に通ったり。病院行っても先生と砂場で遊ぶとかワケ分かんないことばかりで行きたくなかったんですね。それで、もし松坂さんが優勝したら「もう病院に行かない、そのかわり学校行く」って親に言おうと思ってたんです。
なきぼくろ:すごい、漫画みたい。衝撃でしたもんね。
松本:ですよね。あんな試合見せられたら誰だって野球やりたくなりますよ(笑)
大西:あの試合見て人生左右されたって人集めたらすごい集まりそうやな。…ってなんで自分で言ったんやろ(笑)
松本:でもほんとに人生変わりました。パワプロで横浜PLの選手全部作ったりしてました。
なきぼくろ:わかる!「大西さんの肩Sになるまで!」とか言うて夜中の3時ころまでやってました。
松本:わかります! 松坂世代の選手は全員作りましたよ!
大西:楽しそうやなぁ、間違いなく二人共おれよりPL好きやし詳しいやんな(笑)
松本:大西さんはそういう野球のゲームとかやってないんですか?
大西:おれはウイイレ派やったな(笑)
監督を引き受けた理由
なきぼくろ:野球選手になってなかったら、何になりたかったですか?
大西:野球選手になってなかったら…
なきぼくろ:はい。
大西:「何になりたかった」っていうのはなかったね。ぼく、野球選手に「なれるもん」やと思ってたから。
なきぼくろ・松本:すごい…
大西:1年生のとき同じセンターに当時大阪No.1の外野手って言われる方がいて。その人を見て「おれの2年後はこうや」って。頑張ったらプロ行けるって、それしか考えてなかったな。
なきぼくろ:堺シュライクスの監督を引き受けたのも、野球に関わっていきたいという想いがあったからですか?
大西:正直…今までは全くなかった。7年前に現役やめて、いまは焼肉屋を本業で。今までの人生ずーっと野球で夏休みも冬休みもなかったから、一回リセットしたかったんやな。夏は海行って、冬はクリスマスとか。今まで遊べなかった分を取り戻そうとね。
なきぼくろ:そうだったんですね。
大西:ありがたいことに焼肉屋も順調で、「こういう人生もいいな」って。飲食店でやっていきたいなって。そしたら夏凪(一仁・堺シュライクス球団代表)から「堺に球団できるから監督やってくれ」って声かけてもらって。夏凪とは堺ビッグボーイズの同級生で、堺でやるんやったらって事で引き受けた。
大西:でもやっぱり一番の決め手は、「松坂大輔の復活」かな。あんなスーパースターがもがき苦しんで復活したのを見て、「なんでおれ、こんなんで甘んじてるんや」って。それでもう一度野球に携わりたいって気持ちになったね。
さいごに
松本:どうしてもなきぼくろさんに聞きたいことが…
なきぼくろ:はい。
松本:なんで「DL」のユニフォーム変えたんですか?
なきぼくろ:あれはですね、僕なりの「PL復活」への想いです。もちろんあのユニフォームは大好きですよ、魂同然ですから。でも、それくらいバシッと変えたっていうのを作品の中で見せて、読んでる人が「もう一回あのユニフォーム見たいな」「復活してほしいな」って気持ちになってくれたらいいなと思って描きました。
大西:そうなんや、おれもまた読み直そうかな。
なきぼくろ:ありがとうございます!いまだに信じられないです、大西さんとこうして一緒に居られるなんて。やっと顔覚えてもらえると思うとホンマ嬉しいです。
大西:おれも毎週モーニング買って読んでるからね。普通にファンとしてこれからも楽しみにしてます(笑)
松本:僕もバトルスタディーズ大好きです!
なきぼくろ:ありがとうございます!
松本:堺シュライクスの試合のチケットに笑太郎くんとか、漫画の1シーンとか。想像しただけで興奮しますよ。他にもホーム開催でコラボ企画も考えているので、その時はよろしくお願いします!
なきぼくろ:逆にいいんですか、そんなことしてもらって。
松本:ぜひお願いします。それくらい自由にやっていきたいですね。
大西:その時はなきぼくろ君が始球式やな。
なきぼくろ:5億積まれても断ります(笑)
DL学園のユニフォームを着ての試合が実現
PL学園で伝説の死闘を繰り広げた大西監督。
その試合をきっかけに、引きこもっていた部屋から外の世界へと踏み出したオーナー・松本。
さらに、PL学園への愛を『バトルスタディーズ』でかたちにした漫画家・なきぼくろ。
あの伝説の一戦から早20年…
この夏、堺シュライクスと『バトルスタディーズ』の夢のコラボにより、
DL学園のユニフォームを着て試合をする
という企画が実現します。
少しでも多くの人に『バトルスタディーズ』のことを知ってもらいたい。
そして、堺シュライクスで野球に人生をかける選手がいることを知ってもらいたい。
オーナーが熱い想いを綴ったクラウドファンディングのページをご覧いただければ幸いです。
バトルスタディーズと夢のコラボ!DL学園のユニフォームを着て試合を開催をしたい。
おまけ
対談は終わったが、夜はまだまだ終わらない。延長戦突入だ。
延長戦(居酒屋)では、PL時代の思い出話に花を咲かせていたが、ちょっとディープな花が咲き過ぎたため文字にはできません。
雰囲気だけでお楽しみください。
おしまい